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【過去ログ】
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| 『卒後研修制度見直しについて』 |
| (ホームページコラム第16回) |
2004年から開始された医師の卒後研修制度(義務化)の中身が変更されようとしています。義務化される前までは、初期研修医の多くは出身大学に残り、十分な労働者としての位置づけにとぼしく、低賃金で、そのために十分な医学的知識・技術の習得ができていないまま当直等のアルバイトをして生計をたてなければなりませんでした。その時代、あまりにも専門分野しか診ない医師が増えたことに対しても、国民は異論を唱え、研修医にある程度の基礎的な幅広い知識を習得してもらう、全人的な医療を身につけてもらうことを目的に卒後研修義務化がはじまり、研修医の身分や給与の保証がなされ、また研修医は将来の専門分野にかかわりなく自由に初期研修を受ける病院をマッチングという方法で選べるようになりました。また1998年に発生した関西医科大学の研修医の過労死の問題も大きなきっかけとなりました。
それから5年、私たちの病院でも一定数の研修医を育て、全人的な医療人としての心構えや、2年間での医師としての最低限の知識・技術の習得は行い得てきたと考えています。もちろん、研修制度の中身の問題はあり、どうしても細切れになって見学だけとなってしまう分野があり、そういった場合に研修医のモチベーションがあがらない等の問題はありました。
ところが、「地方の医師不足」、「医療崩壊」の問題が、この研修制度が原因とされ研修制度が見直しをされようとしています。もともとは国がとってきた医師数抑制政策のために医師不足、医療崩壊がおこってきたのですが(過去の記事をご参照ください)、国はこの問題に抜本的な対策をとらないまま研修制度の変更をしようとしています。
今提示されている案の概要ですが、2年間の研修期間を実質1年化すること、必修の研修科目を内科、救急、地域医療だけにすること(外科、小児科、精神科、産婦人科は除外された)、都道府県別の募集枠の上限を決め、都市部に医師が逃げないようにすること(研修医の自由意志の尊重に抵触しないか)、研修を受ける病院を退院患者数3000名の比較的大病院に限定すること、などであります。今回の研修制度の変更は、明らかに地方の医師不足、研修医の大学離れとこの研修制度を関連づけており、研修医を大学にしばりつけ、そこから地方の自治体病院へ研修医を派遣可能にさせる目的がありありとうかがえます。もっといえば、義務化された当時の全人的な医療を担う医師の養成、将来どの科を選択するにあたっても必要最低限の知識・技術を習得するという国民の側に立った理念は、すっかり抜け落ちています。
一昨日で、厚労省のパブリックコメント受付期間が終了し、来年度の見直しの最終案が間もなくでてくると思います。国民一人一人がこの問題を考え、国民の利益にそぐわないとすれば、大きな世論を作り国を動かさなければならないでしょう。
ここで、研修医育成に力を注いでおられる聖路加国際病院の福井次矢院長の意見を掲載させていただきます。
⇒m3からの配信を引用させていただいています。
都道府県別の研修医数の上限設定は問題-聖路加国際病院院長・福井次矢氏に聞く◆Vol.2
「目くらまし」の計算式ではなく、「質」に着目して研修病院の選別を
2009年4月10日 聞き手・橋本佳子(m3.com編集長)
・ この記事に対する現在のメッセージ数: 37件
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「まず実施すべきは、卒前教育の見直しであり、臨床研修制度の改正はその次の段階でやるべきこと」と強調する、福井次矢氏。 |
・・・ 今回の見直しでは、必修科を3科に減らしたほか、(1)臨床研修病院単独ではなく、大学病院を中心とした「病院群」による研修体制の整備、(2)都道府県別の研修医の募集定員の上限の設定、なども行われました。(1)では、大学重視の方針がうかがえます。
厚労省の「臨床研修のあり方等に関する検討会」報告書(案)に、「大学の医師派遣機能」との文言が3カ所ありました。それを削除してほしいと文書でお願いしたのですが、反映されませんでした。
「大学の医師派遣機能」と言っていますが、私には時代錯誤的にしか聞こえません。今の若い医師の果たして何割が、そのような形で派遣されたいと思っているでしょうか。「教授の言いなりに、どこにでも赴任する」と言う医師はもはや少ないと思います。
魅力のない病院に強制力を持って医師を送ろうという考えには賛同できません。学位や将来の良いポジションを“ニンジン”に、働きざかりの若い医師を大学医局に引き止めて、多くの地域病院は医局から医師を派遣してもらう、という図式に代わって、医師も地域病院も独自に需要と供給のメカニズムで動くようにするべきです。そうすれば、医師の臨床能力の向上にも地域病院の質の向上にもインセンティブが働くと思います。
・・・ ただここで言う「大学の医師派遣機能」は、従来の医局からの派遣とは限らず、大学単位での派遣も想定されています。
医局による派遣と大学による派遣の違いが私には具体的には分からないので、そこはコメントできません。
また、「病院群」という検討会報告書中の文言も、削除するよう求めましたが、これも反映されませんでした。「強制的に大学病院を中心にしたネットワークを作らされるのでは」と思ったからです。厚労省は「後で内容を詰めます」とのことですが、具体的な内容が分からないことには賛同できないと思いました。
・・・ 研修医の募集定員の上限設定については、どうでしょうか。
現在の募集定員は1万1000人強で、8000人前後という実際の研修医の数を大幅に上回っているのは是正すべきだと思っています。質の高い研修を提供できる施設に絞って、募集定員を9000人程度に減らしてよいでしょう。
今回の募集定員設定の計算式には、「いい研修医を養成する」ための論理は全く入っていません。医学部の定員、人口などで設定していて“目くらまし”的な計算式です。背後には、研修医をマンパワーと見なす視点を強く感じます。しかし、研修医は学習者であり、研修医を医師不足の地域に行かせたら、良い指導をしようとする指導医なら指導に時間をとられ、かえって患者さんを診る時間が少なくなってしまいます。百歩譲っても、マンパワーとして見るのは、専門研修に入った医師からでしょう。
・・・ 臨床研修病院の指定基準を見直すべきなのでしょうか。
まず研修病院の評価が必要です。例えば、研修医が「到達目標」を実際どのくらい達成したのか、その視点からも研修病院の評価は可能です。「到達目標」中の経験すべき疾患を100%達成できる病院もあれば、ギリギリの70%しか達成できない病院もあるようです。
現在のところ、「到達目標」の達成度は各研修医と研修病院のみが把握していて、厚生労働省は把握していません。厚生労働省が「到達目標」の達成度さえ把握しないで医籍登録すること自体、無責任ではないかと思っています。
・・・ 今回の見直しで必修期間が短くなり、「フレキシビリティーが高まった」と評価する声もあります。先生ご自身は、今回の見直しで評価すべき点はあるのでしょうか。
そもそも私は、この時点での見直しは必要ないと思っていたので、今回の見直しで評価できる点はありません。聖路加では従来と同じプログラムで研修を行う予定です。
・・・ ところで、聖路加には医師は何人いるのでしょうか。
当院は520床で、卒後3年目以降の医師は約260人、研修医は1学年20人なので、全体で約300人です。
・・・ ある程度の医師がいる病院でないと、質の高い研修は難しいとお考えですか。
そう思いますが、指導医の数だけ多ければいいわけではなく、あくまでも指導の質と適切な患者数が大切です。研修医の指導には手間がかかります。研修医を単にマンパワーとみなすような病院があるとすれば、大きな問題です。
全国的に研修で有名な病院が幾つかありますが、医学生がそれらの病院を見学すれば、「大学病院でなくここで初期研修を受けたい」と思うのは当然でしょう。
・・・ 最後にお聞きしたいのですが、卒前教育は診療参加型の教育に変わりつつあります。卒前教育が変われば、臨床研修のあり方も変わってくるのでしょうか。
私は旧厚生省の「臨床実習検討委員会」の委員をさせていただいた頃から、卒前の臨床実習の問題に関わってきました。その委員会から1991年に、医師免許を持たない医学生であっても、ある条件を満たせば、リスクの小さい医行為をしても法的にも問題がない、という報告書が出されました。しかし、約10年経過した時点で、厚生労働科学研究費補助金をいただいて調査したところ、診療参加型臨床実習に移行した大学はほとんどありませんでした。このため、すべての医学部(医科大学)卒業生に、今の臨床研修制度のような2年間の多くの診療科をローテーションするタイプの卒後研修が必要だと私は思いました。
もし、今の研修医が行っている研修内容、つまり、卒後研修の「到達目標」のかなりの部分についてすべての大学の卒前臨床実習でカバーされ、医学生が卒業するときにはすでに身についているということになれば、今の2年間の臨床研修をその分、短縮することは可能だと思います。つまり、卒前の臨床実習のクオリティー次第です。しかし今は、医師国家試験の準備に長い時間を取って、診療参加型の臨床実習をあまり行っていない大学もあると聞きますので、臨床研修期間を短縮できる段階ではないでしょう。
つまり、まずやるべきことは卒前教育の充実です。そのための方策として、共用試験に合格したら「仮免許」を与えて、臨床実習には現在の研修医が行っているような内容を組み込んではどうでしょう。知識試験は共用試験でほぼ終了とし、医師国家試験は実技試験中心にする。国試をそのように変えれば、臨床実習のクオリティーは大きく変わるはずです。卒後研修プログラムの見直しは、その後に行えばよいと思います。
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石川勤労者医療協会 城北病院外科
斉藤典才 |
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