ももたろう倶楽部 お問い合せサイトマップ
  ホーム医療ニュース>理想的な減感作食とは?

医療ニュース ももたろう倶楽部2011年夏号177



理想的な減感作食とは?

下図は入院による食物誘発試験で誘発された症状を食物別に比較したものです。食物によって誘発される症状に特徴があります。卵は消化器症状が高率に出てきます。牛乳は幅広く症状が出てきます。小



麦は皮膚症状と呼吸器症状が目立ちます。グレードの強い症状に限ると牛乳は小麦と同じ傾向があり、皮膚と呼吸器症状が中心です。卵グループと牛乳・小麦グループ、大別するとこの2つになります。

どうして食物によって差があるのか? ちょっと興味がわきませんか? そのヒントになりそうな卵アレルギーのケースを紹介しましょう。最初の閾値決定試験では皮膚症状が中心でボスミンをする程の症状がでました。それから卵の減感作をし、順調に全卵50g+2次製品を食べられるようになり、学校給食も解除となりました。いよいよ卵の治癒確認をする段階になり、卵およびその製品を2週間完全除去して検査をしました。1日目は全卵60gを食べましたが、症状は何もありませんでした。2日目に半熟卵60gを食べたところ消化器症状(腹痛と下痢)が出てきました。

この結果は何を意味しているのでしょうか? 
半熟は強いなぁと治癒確認試験の結果にだけ注目するのではなく、どうして皮膚症状が出なくて、消化器症状が出たのかということに目を向ければ、いろいろな想像が駆り立てられます。最初は消化管のバリアーが弱いために、卵が消化管から体の中に吸収されて、皮膚症状が出てきた。その子も減感作によって消化管バリアーが強くなり、半熟卵が消化管に留まって、消化管に限定された症状が起きたのではないかというのがひとつの仮説です。消化管バリアーの点から、食物によって誘発される症状に差があるのはどうしてか考えてみましょう。

卵は消化吸収があまりよくない食物です。卵黄のビオチンと卵白のアビジンとが結合して非常に分解しにくいものになったり、熱変性した卵蛋白が凝固するなどして消化吸収しにくくなって、消化管内に長い時間留まりやすい食物です。その結果、消化管バリアーに影響しやすい食物と言えます。卵は消化管症状も出やすいが、逆に食べ続ければ、消化管バリアーの強化にも繋がるということです。卵白粉末で減感作をしていますが、これは卵現物よりまだ吸収がよいので、消化管バリアーだけでなく、バリアーを越えて皮膚・呼吸器の細胞にも影響しやすい面があると考えています。理想的な減感作食は固形的な面(消化管バリアーを鍛える)と流動的な面(吸収されてからの皮膚・呼吸器の反応を低下させる)を併せ持つものではないかと考えます。卵白粉末はその両面があるので、結構いい減感作食ではないでしょうか。

牛乳はまさしく流動物です。従って消化器症状のみならず、吸収後の皮膚・呼吸器症状が強く出ることになるのでしょう。牛乳アレルギーの減感作食として牛乳で十分OKということですが、牛乳で特に消化器症状が強いケースではひと工夫が必要になるかもしれません。小麦と一緒に加工された牛乳製品にするのも一つの方法でしょう。ウドンというのは結構消化がいいので、あまり消化管に留まる時間がなく、皮膚・呼吸器症状が出やすいのかもしれません。小麦アレルギーではうどんで減感作していけば、それでOKでしょう。小麦で消化器症状が強い人では、もっと消化管内に留まる時間が長いもので減感作をしていく必要があるでしょう。グルテン粉を団子にして食べる。これって結構、そんな人向きかもしれません。

結論は、減感作食の内容は、どの食物アレルギーで、どの症状をターゲットにするのかということで変わるべきでないのかということです。経口減感作治療がまだ始まったばかりの段階では、減感作の効果や果たしてそれで食物アレルギーが治るのかに注意が向きがちです。次のステージは減感作の質的向上を求めることです。卵アレルギーの減感作食をどれくらいの頻度で食べて効果があるのか?症状が起きないようにする頻度とアレルギーを治していく頻度は違うのか?全卵でないと駄目なのか、2次製品でもいいのかなどいろいろ知りたいことがたくさんあります。理想的な減感作食も今後検討されなければならない事項です。 

追記:減感作の経過も食物によって差があります。この量を超えると後はすんなりいく壁も食物で違います。これは次回にお話をします。
2011年6月3日 松本一郎

△ページのトップ
金沢市京町20-3 城北診療所小児科内
Copyright(C) ももたろう倶楽部.All Rights Reserved